本展はまるで異種格闘技の様相を呈していて、この中から一人を選び出すことは正直困憊した。
その中で冨谷悦子さんに魅入られたのは、驚くべき高密度な創作力と技術力そして作品制作に
かける間尺に合わない時間の消費量だ。写真家であるぼくの現在は、デジタルの登場で一瞬の
内に欲しい映像を手に入れ、すぐさま確認出来る。本展最年少作家で美しき女性が、まだあり
あまる時間を惜しげもなく使って、憑かれたように彫り起こした作品は、写真初期の銀塩写真
家がモノクロームで撮った細密世界のように懐かしく美しく、そしてエロティックに見えた。
篠山紀信(写真家)